2009/07/17

全国調査「日本人の国民性」について

Infoseek内の読売onlineのニュース記事で、大学共同利用機関「統計数理研究所」が「日本人の国民性」というタイトルで調査を行なった結果を発表(http://www.ism.ac.jp/kokuminsei/index.html)したことを知りました。 その記事の中で気になったのは、「『あの世』を信じるか」という問いに対して1958年から2倍近くに増えた、という部分。

その段落は「一番大切なものは?→家族」といった回答が並び、記者が気になった回答をざっとまとめたようなものでした。けれども、この部分が唐突に見えて、気になったので一次情報を確認してみる事にしました。

キーワード

研究所ではレポートをとても見やすく公開していて、1953年以降5年毎に全国的な社会調査を行なっている事や、調査の目的などが明記されています。ただレポートを読むためにはいくつか調査方法や固有の単語について知っておく必要があります。

  • まず数字はパーセントで全回答数は丸括弧内に書かれています (【集計表の見方】http://www.ism.ac.jp/kokuminsei/table/data/html/howto.html)
  • "D.K."という項目は"Don't Know"の略で、調査員の質問を繰り返し聞いても質問自体が理解されなかった事を示しています (Q&A http://www.ism.ac.jp/kokuminsei/qanda.html)
  • "その他"は回答があったものの、用意されたものではなかった場合とされています (同上)

気になったあの記事

気になった「あの世を信じるか」という質問は大枠で「宗教」に分類されている質問の一つで、1958年以降一度も調査されていないもののなぜか2008年に復活した項目でした。全体的な宗教を信じるかどうかという割合に大きな変化はないようでしたが、あの世なるものを信じないと回答した割合は確実に減少し、その分「信じる」「どちらとも」が増加したようです。結論は信じる人が増えたというよりも、信じないと回答する人が減少したが正しいのではないでしょうか。

さらには「あの世を信じる」「宗教心は大切」などと回答した割合が、「宗教を信じる」人の割合を越えている点もおもしろいですね。同じ「宗教」には2008年では項目から消えた「首相の伊勢参り」についての質問もあり、これが1953年から2003年まで調査され続けていた事が興味深かったです。

この他の項目では小さい頃から子供にお金が一番大切なものと教える事の是非について、1953年で65%の人が賛成と回答しているところに吹き出しそうになりました。大事ですけどね、一番じゃないでしょうと。仕事とお金では、お金があっても働かないとつまらないと回答している人の割合はそれほど大きく変化していないようです。子供に対する気持ちに変化がでているのでしょうか。

広範囲なフィールドワークなので、質問項目について、なぜこれを聞くかな、と思うものもないではありませんでしたが、これだけのボリュームがあるとなかなか楽しめます。 ページ遷移を繰り返していくと途中から「首相の伊勢参り」などの2008年度から消えた項目が選択不可になったりしましたが、調査結果のトップページからは全項目にアクセスできるようです。

内容は良いのですが、リンクは自由に張れないようです

この分析結果をニュースにしているサイトは多いのですが、リンクを張っていないものが多いようです。これは各ニュースサイトの運営ポリシーによるものと思われます。

しかしblogに感想を書いて参照して欲しい資料にリンクを張ろうとしても、利用条件が邪魔をしているようですね。「リンクは自由に〜構いません」とある「自由」は続く条件を受けいれる事で無料になるという程度の意味でしかないようです。

各情報へのリンクは「自由」にできずに、さらにメールで連絡を強制させるというのは、この手の公的機関では良くみたりするのですが、私の感覚ではこれは「自由」ではありません。

本来は尊重して欲しいと訴えるべきサイトの運営ポリシーを利用条件に持ってきているのだと思います。 もちろん、それをどう表現するかは「自由」なのですが…。この場合の「自由」はもちろん無料という意味ではありません。

将来に渡ってリンク先が存在する事は保証できないし、情報へのアクセスを維持するために保証できる範囲を明らかにしたいという意図であれば理解はできます。 また一部を転載するなどとなれば著作権を守るために事前に連絡をお願いするといった事は当然だと思います。

しかし、それは御互いの協力がなければ維持できない事ですから、例えばポリシーを尊重した利用をお願いしたいといった文言で情報を利用するなら適切に運用するよう協力してという事を表現するべきだと思います。また適切にリンクが維持されるようにする責任は利用者側にあるという事を明記する事も当然あるべきだと思います。

何かあった時の責任の回避にすらならないこういう文言は誰が考えて普及させるんでしょうね。 詐欺的サイトが「悪徳商法?マニアックス.net」あたりを脅すための手段として準備しておくのならよくわかるんですけれど。 学術機関が公開された情報へのアクセスを制限するなんて、合理的と思われる理由がなければ悪い冗談でしかありません。

情報公開元がリンク先を制限する事がいかにナンセンスかは既に多くの指摘がなされています。 それと同時に小学校等の教育機関でプライバシーの保護と情報公開の板挟みにあった末、(力を持たないものの心の叫びと思えるほどに)無力かつ極端なポリシーを掲げている場合もあります。根の深い問題なので興味のある方は調べてみてください。

各ページにリンクに使って欲しいURLを記述して、そこにアクセスすると"○×が提供しています"とか、"御利用にあたって"などのメッセージと"次へ進む”ぐらいのボタンが出てくる仕組みがあるべきで、情報を意図した通りに使ってもらうための準備をするべきだと思います。 確立された標準的な方法も、そのための準備をする管理者の余裕もないのだと十分理解できるんですけれどね。現状はあるべき姿からとても乖離していると思います。

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